■変わるものと変わらないもの

その人に合っていること
その場所に合っていること
時間を経て記憶に残るように

時間=社会に追随できること
住まい手の都合に応えられること
家族の形は徐々に変わっていく
冷暖房の設備も新しいものに変わる

建物の芯となる変わらないものと
建物の懐を深くする変わるもの
古いものだけに固執することなく
目先のものだけにとらわれることなく

そこにしかない建築を創っていきたいと思っています




 ■建物の種類





  1.住宅


家の主役は建物ではなく、そこに住まう人です。
住宅は、形や色の格好よさや奇抜さだけで完成する芸術ではありません。
ものではなく、日常的に繰り広げられる生活や志向、安心感、そこにあるべき光・風・緑・・・住まう人との対話を重ねる中から徐々に出来上がっていくものです。
生活の背景としていつしか記憶に刻まれていくようなさりげない建築、
時間を経ることによって完成していく建築が好ましいと考えます。
  2.公共的な建物


存続時間が長い建物、広範囲に影響を与える施設などは、広い視点をもって建てられるべきだと考えます。
ヴォリュームの大きさや利用者の多さによる空間的な広がり、長期間に亘って利用される時間的な広がり、周囲に与える影響は住宅とは随分異なります。
建築は社会情勢そのものでもあるため、経済的な視点を抜きに計画が進むことはありませんが、画一的な材料を使ってどこの町なのかわからないような建物を量産するのではなく、その場所の歴史や風土のようなものが反映されている建物がもう少し増えると街も楽しくなってくるのではないでしょうか。

  3.民家


日本あるいはその地域の風土を伝える建物、壊されるべき時期や状態にありながら壊されることが惜しまれる建物。
今の時代に同じものを再現して住みましょう、というのはなかなか難しいかもしれませんが、そこには材料の使い方や日本に合った空間の作り方など様々なヒントが散りばめられています。
時間を積み重ねてきたものに敬意を払うこと、郷愁感だけではなく、それがなぜ長い間使われてきたのか考えてみることは大事なことだと思います。
今我々が建てようとしているものは、数世代後には「民家」と言われているでしょうか。そこに住む人、そこで育つ人にどのような影響を与えているでしょうか。二世代後の子供たちにはどのように見えるのか、ぜひ聞いてみたいものです。



 

 ■シンプルであること




建築には重要な部分と従属的な部分があります。これは建て主の思考にも左右されます。
例えば「収納を多く」と「部屋を広く」という2つの項目は、家の大きさが一定であれば相反する与件ということになります。
なるべく広めに部屋を確保し収納は最低限の大きさでよいと考えるのか、ゆとりをもった収納を計画してから部屋の大きさを決めるのか。
こういう場合は、どちらに重きを置くかはっきりさせて、その他を従属的にバランスさせていくことが大事であり、設計とはこの作業の繰り返しなのです。
様々な判断を積み重ねて行く間に、建築は住み手の意志を示す明確かつシンプルなものになっていきます。「シンプル」という語は流行りのように使われ、その多くは飾り気のない状態を示しますが、単に何もない状態というのは退屈な場所でしかありません。そうではなく、主張を明確にする経緯に、シンプルさは生み出されるものだと考えます。




 ■時 間





  1.プラン


新築後1年はそのまま住めるでしょう。でも10年、20年後はどうでしょうか?計画は多くの場合プランによって話が進みますが、このプランを支えるためには「構造体」が必要です。多くの優れた建築は、この構造とプランが一致し、無理がありません。
プランを先に決めてから構造体を当てはめるのは合理的ではないですし、「壁を取りたい」というような生活スタイルの変化に追随しにくくなります。
構造体とプランの間にルールを作り、将来的なプランの融通性を確保しておくことが建物を長持ちさせる上では重要です。
また、設備的な寿命も概ね10年を過ぎると機器、配管類と次々にやってきます。やはり計画時点でメンテナンス性(手入れのし易さ)も考慮しておくべきでしょう。建物は複雑にすればするほど、工事費もかかりますし、将来維持していくのもたいへんになっていきます。
目の前に最新の便利な機能を列挙されるとついつい欲しくなるものですが、本来なければならないものはどこまでなのか、初めに判断しておくべきでしょう。

  2.仕 上


住宅は長い時間を過ごす場所ですので、仕上材料としてはなるべく自然なものがよいと考えます。それは身体への問題が少ないことと、生活を過ごした時間がそのまま感じられることからです。
木の仕上(フローリング床材、壁材)、土の仕上(珪藻土などの壁の仕上)、石の仕上(立派な石以外に、砂利なども含めて)…
自然材ももちろん汚れたり傷んだりしますが、この経年変化を許せれば、時間を重ねた材には味わいや美しさが感じられると思います。
ヨーロッパの古い石の建物、日本の古寺や町屋、モロッコの土の家…
しかし、もっと重要なのは自分の生活にとって自然であること、だと思います。工業品でも本当に必要とされているものは十分いい味を出してくれますし、長い間自然に付き合えるのは家にとってもいいことです。

  3.自 然


素材としての自然の他に、建築に関わる自然としては、植物、光や風もそうですし、水が使われることもあります。光の美しい空間、空気が気持ちよく流れる空間は、それだけでそこに居続けたくなるものです。
朝日の美しい風景があるのであれば東側に大きな窓を。
きれいな夕日を眺めて暮らしたいということであれば西向きの窓を。
温熱環境としては西側の窓はお勧めしませんが、夕日が好きな方もいらっしゃるはず。
敷地の環境、住み手の嗜好に合わせて自然を取り込めれば、家はより生きたものとなるはずです。